大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

熊本家庭裁判所八代支部 昭和51年(少イ)1号 判決 1976年10月19日

被告人 T・M子

主文

被告人を懲役六月に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、出生して間もなく実母から遺棄され、両親の顔も知らないまま芸者置屋で生育し、小学校も満足に卒業することなく、その後は地方廻りの劇団の団員や飲食店の店員などとして稼働し、その間、結婚や同棲を繰り返すなどの生活を送り、昭和四〇年一一月、佐賀地方裁判所で、生後間もない実子を遺棄した罪により、懲役六月に処せられたほか、窃盗罪や強盗罪で服役するなどしたあげく、昭和四六年ころ、T・Oと結婚したものの、その後も他の男性と同棲するなど不倫な生活をしていたが、昭和五〇年三月ころ、以前夫婦関係のあった男性との間に生れたS・U子(昭和三五年五月五日生)を、同女が中学を卒業するのを機会に、同女が幼時より収容されていた養護施設から引き取り、昭和五〇年九月ころ、一旦、同女を八代市内の接客業者に事実上の養女として預けた後、再び自己のもとに呼び戻していたものであるところ、同年一一月二三日ころ、熊本市○○町×丁目×の××所在の○田○キ○方において、○島○が長崎県南高来郡○○町所在のヌードスタジオ「○○ミュージック」の経営者○田○孝に対してヌードダンサーをあっせんしているものであつて、前記S・U子を右○島に引き渡せば、同人が、同劇場で陰部を露出して観客にみせる公然わいせつのストリップショーを演じさせるおそれのある右○田に対し、さらにこれを引き渡すことの情を知りながら、児童である右S・U子を右○島に引き渡したものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

被告人の判示所為は児童福祉法六〇条二項、三四条一項七号に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で被告人を懲役六月に処し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 松村利教)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例